『「社会調査」のウソ:リサーチ・リテラシーのすすめ』

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これは2000年に出た新書で、古いが、良書。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166601103

124頁から141頁は必読。なんとなれば、世に存在する主張は、著者が述べるように、大抵上掲図(本書の127頁から)で挙げられている可能性をいちいち検討せずになされている。

特定の主張に合致した可能性だけしか視界に入らないように見える博士も本書には登場する。

実は筆者の専門分野では著名学者にこのタイプが多い。(無名学者に少ないというわけではないし、学会の外ではドナルド・トランプや安倍晋三などもいるが。)

例えばIan Maddiesonという比較的名を知られた人は http://wals.info/chapter/2 に…the presence of vowel harmony may make it easier to tolerate a larger than average number of different vowels in a language…と書いている。上掲図にならって「the presence of vowel harmony」を㋑、「a larger than average number of different vowels in a language」を㋺とする。彼は可能性2すなわち「㋑→㋺」を示唆している。例えば「㋺→㋑」や「㋑←■→㋺」(それぞれ可能性3と可能性6)の可能性に言及はない。おそらく意図的に無視したのではなく「㋑→㋺」しか見えないのだろう。実は彼の文章と地図を見る限り㋑と㋺の間にそもそも相関関係があるのかさえわからない。

これと同様の「blindness to alternative possibilities」は例えばMartin Haspelmathというこれも有名な人やJohn A. Hawkinsといった権威筋等にも非常に顕著だ。これらやNick Enfieldという多作な人などはさらに厳密な定義をする能力が無いという共通点も持つ。

All the more reason why Maddieson, Haspelmath, Hawkins, Enfield, and other linguists should read this book.

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